オンラインショッピングモール「PARCO-CITY」について教えて下さい。リアルとネットではビジネスのやり方は違っていますか? 		       
              検討しはじめた頃は全く違うと思っていましたが、最近ではリアルもネットもそのビジネスのやり方に本質的には変わらない部分が多いと思います。
              わたくしどものモールは、リアルと同じようなテナント方式になっています。
              お客様とコンタクトして頂くのは、荷物の発送から、クレームほか顧客への対応まで、すべてテナントさんです。
              したがって、テナントさんにとっては顧客管理ができるので、それによってマーケティングができ、非常にリアリティがあるのですけれども、一般的なネットショッピングサイトでは、サイトの販売主が仕入れをし、どんなものが売れるか、サイトの販売主にある程度おまかせをするので、そちらの方が現実的には負担が少ないでしょう。
              一般的なファッション・サイト方式では、極端な言い方をすれば、言われたとおりに商品を納品していれば済むわけなのです。
              しかし、わたくしどもの場合は、あくまで「モール」にこだわり、つまり、まさにリアルと同じで「場所」を用意しますが、売り子さんも顧客管理も…そういった部分はテナントさんが担います。
              手間はかかるけれどもそれが本当の商売の原点ではないかな、と我々は思っています。
              そうでなければ、だれに何がどう売れて、どんな反応や意見があったかを把握することはできませんので、マーケティングもできません。
              パルコの考えている「モール」システムは大変かもしれませんが、お客様と確かなコンタクトを取ることができます。
              リアルでもネットでも、基本的には売り手と買い手のコミュニケーションが大切かと思いますが…。
                    
               
              同じショップでもリアルとネットとでは売れ方が違うということはあるでしょうか?       
              予想外、というか当たり前なのかもしれませんが、リアルで買っているお客様もネットで買っていますし、また逆にネットで買っているお客様がリアルでも買っています。
              地方で近くにショップがないからネットで買っている例も、もちろんありますが、そのためにネットがあるという感じではないですね。
              むしろ、リアルで固定ファンとなった人にとって、ネットでも同じように買い物できますよ、ということが大きいのかな、と。
                    
              ということはリアルでファンをつかんでいないで、ネットだけで商売を成り立たせるのは難しいのでしょうか?      
              それはMDによりますね。
              その商品にもよりますが、ブランドものであるとかよりも機能性が 優位であったり、価格帯であったりとか…そういった中ではブランド力がなくても考え方がはっきりしていれば、つまりそれだけの独自性があれば売っていくことができます。
              しかしそのブランドを知らずにポン、とネットを訪れるということはほとんどの場合多くはないでしょう。
              だからネット上でも何らかの販促を考えていかなくてはなりません。
              たとえば、はじめて買う人には割引などによって買いやすくすることであるとか、
              会員になると情報やサービスを受けられるということであるとか…ちょっと興味があるという人にとって、下調べをするのに店舗にいってよく知らない店員さんに話を聞くよりはそちらの方がアプローチしやすいでしょう。
              昔はそれがチラシやカタログ、雑誌だけでしたが、今はさらに雑誌との連携もできますし、そのようにして新規顧客を開拓していくことはできます。
              同時に既存の顧客にはリアルと同じようにネットでもお買い物できますよ、と広げていくのです。
              リアルもネットも両立してはじめてパワーを持つように思います。
              
                     
               
              広報はパルコさんの得意とするところですね。        
              パルコはリアルのショップを1つのビルに集めながら、全然違うカテゴリーでアプローチしてお客様を呼んできました。
              パルコという会 社は自分のところでは何も「もの」は生産していません。
              テナントさんを集めてビルを運営しているだけです。
              だからお客様を集めることが仕事であり、入っていただいているテナントさんにとって意味のある、魅力あるアプローチをお客様に行ってきました。
              そういった考え方や企業スタンスがわたしは好きでしたね。
              主たるものごとには絶えず裏側があり、リアルがあればネットが、デジタルがあればアナログが、というように両極が存在します。
              だからものを売るということは、極端な発想…ものを売らない発想というのがあって、売るということは「いかに売らないか」ということと相関があるのです。
              例えば、ものを売ろうとして、「いいですよ、いいですよ」としつこく宣伝しても、そんなにいいものだったら宣伝しなくても売れるじゃないか、という発想があります。
              そんなにいいお店なら、そんなこと言わなくてもいいじゃないかと思うわけです。
              単にこのお店がいい、というよりもわたしたちもっと別なことができますよ、と言った方が逆に効果のある場合だってあるのです。
              例えば自動車会社が、加動力主義以外の考えで、エコカーを作ったことの方がはるかに時代に対応しているし、話題性を取っている。
              それと同じようにイノベーションしていく仕方というのは必ずしも主たる源泉があるところにすべてがあるわけではなくて、その外側にもきっとなにかがあると思うのです。
              パルコという会社のそのような発想のし方が好きでした。
                   
               
              ものを売ると言うことよりは世の中にどんなメッセージを発していくか、ということでしょうか?         
              そんなに大げさなものではないのですが…パルコはたまたまものを作っていない会社で、基本的には動員であるとか話題であるとか、それらを中心にして考えることがビジネス上必須でしたから。
              不動産業の本来の発想で言えば、テナントさんを集めてビルを造れば、そのビルの宣伝をするというのは、こんなテナントさんが入っていてこんなことをしていて、こんなものを売っていて、と宣伝すればそれで済むわけですよね。
              けれどもパルコというのはそれだけでなく、商業ビルの持つ環境やソフトの価値を上げようとしたのだと思います。
              パルコ自体が売っているものは何もないのに、パルコに人を集めることが必要だ、と発想したわけです。
              そのために何をしたかというと、劇場をつくったり、プロモーションを行ったり、出版を行ったり…小売業では考えられないカテゴリーですよね。
              パルコは駅からも離れていて、そこにお客様を集めるのに公園通りのキャンペーンを行って地域活性のようなことも行いました。
              そういったことはものを売るための直接発想ではないですよね。
              
              
                   
               
              少子高齢化にともない日本のファッション市場は小さくなると言われていますがそのことについてはどうお考えでしょうか?        
              少子高齢化でマジョリティは減ってもあるコアになる人間というのは絶対にいると思います。
              コアというのはファッションをリードする人であるとか、センスのいい人だとか、それに興味を持つ人だとか…
              もともとパルコは数を追うのでなく、質の論理で発想してきましたが、数を追うやり方は価値観の分散と共に、今後、もっと厳しくなるのではと思います。
              極端な話ですが、手作り感であったり、沢山はつくれないけどわかってもらえる人にはわかってもらえるようなことが少子高齢化の中ではお客様とコンタクトができていきやすいのではと感じています。
              
                    
              リアルでもネットでも、成功しているテナントさんとそうでないテナントさんがいらっしゃると思いますが、もちろん商品の違いもあるでしょうが、やり方の点ではどういうところが結果の差を生んでいるのでしょうか…?      
              商品がベースにあるわけですが、我々のデベロッパーとしての経験から言うと、やはり一個のものを二個に、 二個のものを三個に…と売っていく熱意ではないでしょうか。
              もちろん熱意は人一倍負けない、という方はたくさんいるでしょうし、熱意だけで解決できないことも確かに多くあります。
              たとえばヒットするタイミングであったり、一種、運のようなものもあるかもしれません。  けれどもその時代の中に合ったアピールの仕方は何なのかと、考えるということも熱意なのだと思います。
              世に出なくてはという価値の考え方があるならば、出さなきゃならないということを考えるのも熱意なのではないでしょうか。
              だから単にものをつくっているだけではだめなのです。
              アピールすることが自分にできなければ自分をわかってくれる理解者を集めるべきです。
              もののよさをわかっている人間だけが生きのびられる時代ではなくて、よさをわかったら、それをどのようにアピールし、ビジネスに結びつけ、なおかつそれをひとつの運動体にしていくのか、が大切だと思います。
              ただ、どんなにいいと思ってもそれが時代のニーズにあっていなければだめなのですが。
              しかし、いまの時代に何が必要かと考える、ニーズから熱意をつくるやり方をするタイプと、あくまでも自分の好きなことをやっていて、それが時代に対応していないから今はだめなのだとあきらめられるタイプとあると思います。
              どちらが幸せなのかはわかりません。
              わたしは両方とも理解できるし、そういうことが理解される時代になければならないと思っています。
              色々な価値観があっていいのです。
              けれども世に出てビジネスサクセスしたいという希望があるならば、やはり時代対応の中でビジネスとして成り立つためのニーズは何なのかということと、自分と自分のクリエイティビティをリンクさせていかなくてはなりません。    
            
                 
                   
              株式会社 パルコ・シティ 
              取締役 
              大倉正美 
               
              神奈川県出身 
              1969年  横浜国立大卒 
              1973年  株式会社パルコ入社 
              1993年  同社熊本店店長 
              1996年  SINGAPORE PARCO GM出向 
              1999年  同社宣伝局長 
              2002年  同社執行役員宣伝局長 
              2004年  株式会社パルコ・シティ代表取締役社長就任 
               
              PARCO-CITY HP  http://www.parco-city.co.jp
                       
   
            
   
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